スプリング効果(SLE)・高反発クラブ規制ルールのまとめ

このblogでは各種様々な説が飛び交う2008/1/1施行のSLEルールを、個人の思惑や推測を極力排除し、JGA(日本ゴルフ協会)の正式見解を元に出来る限り詳細かつ明確な解説を試みました。R&AやJGAにも直接問い合わせを行い纏め上げた内容を以下にご紹介いたします。

高反発

SLE(高反発)ルールの範囲

当初SLE(高反発)ルールはドライバーだけを対象に設けられていましたが、2006/2/1以降正式にパターを除く全てのクラブへと対象範囲が拡大されました。これは、当時実際に基準値を超えるクラブはドライバーしかなかったためとのことですが、その後メーカーの中にはドライバー以外のクラブでも高いスプリング効果を持つクラブをデザインする傾向が見られために、USGA(全米ゴルフ協会)/R&A( ロイヤル&エインシェントGC)は 2006年1月にメーカー宛にスプリング効果規則はドライバーだけではないことを明確にする文書を出しました。
すべてのロフトのクラブを含む特性時間の測定(PDF)


違反クラブが市場に出ていない段階で、各メーカーに対し警告を出している状況から、ルール統括団体であるR&A,USGAは、当然メーカーはスプリング効果の基準値を超えるFWやユーティリティーは開発していないと理解しているので、現時点においてドライバー同様の適合リストを作成する予定はないそうです。


ただし適合リストはありませんが、スプリング効果テストはドライバー同様行なっているので「ドライバー以外でも用具審査に提出して適合性を確保することもメーカーとして必要なことと思う・・特に基準値に近いスプリング効果の高いFWやユーティリティーを製造するのであれば、用具審査を利用して適合性を確認しておいたほうがよいと思う・・」とJGA(日本ゴルフ協会)担当者から指摘を受けました。


なお、ご存知の方もいらっしゃるかと思います が、高反発アイアンとして問題になったマグレガーゴルフジャパンのマックテックNV3アイアンにつきましては、極限られた例外的な措置であり、一般化されることはないだろうとのことでした。
マグレガーゴルフジャパン株式会社マックテックNV3アイアンについて


以下JGAリリースを基に、クラブ別のスプリング効果の適合テスト情報を表にまとめましたので参考にして下さい。

クラブのタイプ テスト方法 制限値 導入日
ドライビングクラブ(ドライバー) ペンデュラム 239μs(+許容誤差 18μs) 2008 年 1 月 1 日
フェアウエイウッド
ハイブリットクラブ
その他「アイアン」ではないもの
改造したペンデュラム 239μs(+許容誤差 18μs) 2006 年 2 月 1 日
伝統的なアイアン 改造したペンデュラム
(選別のため);キャノンテスト(必要であれば)
基準プレートより
0.008 高い数値
2006 年 2 月 1 日


SLE(高反発)ルールの原則

2008/1/1以降、プライベートでゴルフを楽しむ一般ゴルファーであっても、ゴルフプレーの際に高反発クラブを使用した場合ゴルフ規則違反となります。


これがSLE(高反発)ルールの大原則であり、これを具体的に示すJGA(日本ゴルフ協会)の正式見解・よくある質問とその回答集を以下に引用します。

1. ドライバーについての新しい規則は、アマチュア(クラブレベルゴルファー)にも適用されるのですか?

答. 適用されます。この新しい規則は、その能力やプレー形式に関わらず、すべてのゴルファーに適用されます。これはクラブ競技でプレーするクラブレベルゴルファーも含みます。

JGAサイト内にある、「SLE規則よくある質問」



2. 2008年以降でもプライベートのゴルフであれば高反発クラブを使ってもいいと聞いたのですが本当ですか?

答. いいえ。ゴルフ規則は世界共通の規則であり、ゴルフをプレーするための規則です。競技であるかプライベートであるかは関係ありません。スプリング効果の基準値を超える高反発クラブは2008年1月1日以降ゴルフ規則に不適合となるのでゴルフゲームをするのであれば使用することはできません。また、高反発クラブの使用を認める競技の条件やローカルルールの制定も認められません。

JGAサイト内にある、「用具規則一般」



Q1. 2008 年 1 月 1 日以降に高反発クラブが使用できなくなるのは日本だけですか?

A1. 高反発クラブの禁止は世界統一のゴルフ規則で規定されます。したがって、世界中でプロ、アマ問わず全てのゴルファーにこの規則は適用されます。

JGAが各加盟倶楽部に配布したFAQ (PDF)


このようにJGAは非常に明快な回答しています。


ただ、一方で以下のような回答もしています。

3. 私が新しい規則に適合したドライバーを使用していることを確認するのは委員会の責任ということですか?

答. 違います。あなたの使用する用具がゴルフ規則に適合していることを確認するのはあなた自身の責任です。

JGAサイト内にある、「SLE規則よくある質問」



Q6. ゴルファーが違反クラブと承知の上で高反発クラブを使用してラウンドすることを倶楽部としてどのように対応すべきですか?

A6. ゴルフ規則に基づいて行われる競技では当然競技失格となります。悪質な場合は懲戒処分を検討すべきです。しかし、競技とは関係なしにレクリエーションでプレーすることについて、ゴルフ規則は関知しておりません。ただし、スコアは正当なスコアとして採用されません。

JGAが加盟倶楽部に配布したFAQ (PDF)

上記、JGAが各加盟倶楽部に配布したFAQ Q1で、高反発クラブの禁止は世界統一のゴルフ規則で規定されます。したがって、世界中でプロ、アマ問わず全てのゴルファーにこの規則は適用されます。 と示しながら、一方 Q6において、競技とは関係なしにレクリエーションでプレーすることについて、ゴルフ規則は関知しておりません。 と一見矛盾しているとも受け取られかねない表現があります(全く矛盾していないのですが・・)。これがSLE(高反発)ルールの理解を困難にしている、あるいは誤解される1つの要因になっていると感じます。


この両者をすんなりと受け入れるためには、ゴルフゲームの本質とゴルフ規則(Rules Of Golf)のあり方の理解が欠かせません。一言でそれを表すならば、「ゴルフゲームではプレーヤー自身が審判である」ということです。1753年にR&Aが創立されて以来250有余年の歳月を重ね、ゴルフは自立のゲームとの哲学と言うべき理念が確立され今日まで受け継がれています。これは新SLEルールに限らずゴルフ規則全般に対して適用される大原則です。


あえて申し上げればこれらの状況をすべて理解したうえで、自分は常にスコアをつけずにレクレーションとしてゴルフを楽しんでいるので高反発クラブを使用する・・・という選択肢が存在する余地はあります。ただ、いかに本人が割り切ったとしてもルール上違反である事実は変わりませんし、意識に上らないとしても何がしかの後ろめたさを感じながらプレーすることになると思います。仮にそのクラブでドラコン賞を獲得したり、コンペで優勝したとしても心から喜べないのではないでしょうか・・

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おそらくゴルファーの大半は競技等には参加せず、年に数回気心の知れた仲間内でゴルフプレーを楽しむ程度だと思います。緑豊かな広大なフェアウェイでドライバーショットをする爽快感はゴルフの醍醐味の一つです。楽しむためのゴルフがゴルフ規則に心をわずらわせては本末転倒です。一切の気兼ねや後ろめたさを感じることなく心からゴルフを楽しむためにも、ゴルフ規則に適合したクラブを使用しプレーすることが最善の方法であると思います。最後にJGAの常務理事であり、規則委員会用具審査部会部会長である大橋一元氏のお言葉を紹介します。


今回の2008年スプリング効果新規則はゴルフ規則本則の変更であり、それをローカルルールで修正することは認められません。また、競技に参加しない場合であってもゴルフゲームをするのであれば規則に従ってプレーすることは当然のことです。仲間との遊びのプレーであっても規則を知りながらバンカー内でクラブをソールするプレーヤーはいないと思います。用具の規則もゴルフ規則の一部であり、規則を守ってプレーすることでこそゴルフの持つ魅力を最大限に感受することができるのです。

JGA Golf Jounal Vol.81 内記事(PDF)


SLE(高反発)ルールとは

はじめに

2007/12/31まで、ツアープロや競技アマなど一部エリートゴルファーを対象にしていた高反発クラブの使用を禁止するスプリング効果規制ルール(SLEルール)が、2008/1/1以降は我々アマチュアを含む全てのゴルファーへ対象範囲を広げ正式にゴルフ規則本則に盛り込まれました。ゴルフ規則(Rules of Golf)には、付属規則Ⅱ クラブのデザイン 4 c に以下のように明記されています。

4 c スプリング効果と動的特性

クラブヘッド(クラブフェースを含む)のデザイン、材質そして(あるいは)構造、また処理は:
(i)ペンデュラムテストプロトコル(R&Aテスト内規)に定められている上限を超えるスプリング効果を持ってはならない。
(ii)独立したスプリングやスプリング特性(これらに限定されない)などのようなクラブヘッドのスプリング効果に不当に影響を与える意図、あるいは効果を有する機構や技術を組み込んではならない。
(iii)球の動きに不当に影響を与えてはならない。
注:上記(i)はパターには適用されない。
付属規則Ⅱ クラブのデザイン

SLEとは英語の "Spring Like Effect" の略で、日本では 一般的に"スプリング効果"と表現されています。フェースのトランポリン効果という表現を聞いたことがあるかもしれませんがこれも同じことを表現しています。スプリング効果とは、ボールをヒットする際、クラブフェースが一度たわみ、その反作用でボールを弾き飛ばず物理的作用のことを言います。チタン製のヘッドが主流となりつつあった1990年代後半より、フェースをより薄く広く、より柔軟性のある素材を使用することでこの効果を増大させ飛距離アップを狙った多くのモデルが開発されるようになり、特にプロツアーにおいて年々ドライバーの平均飛距離が大きく伸びました。

sle_pics

我々アマチュアにとってはプロの300ヤードショットを見るのは楽しみの一つですが、一方において、パー4での第2打にウェッジを多用し楽々パーオンする場面を見て物足りなさを感じた方も少なくないと思います。本来のゴルフゲームの面白さをそぐ、この様な状況を憂慮し、これを抑制することを主な目的としてSLE(高反発)ルールが制定されました。これにより規定値(CT値257us ±18us)を超える反発力をもつクラブを使用した場合はルール違反と見なされることになりました。(ただし、フェースの反発力向上は、飛距離増加の原因の1つにすぎません。クラブヘッド容積、慣性モーメントの増大、クラブヘッドデザインの最適化、シャフトやゴルフボールの進化などの相乗効果により平均飛距離が大きく伸びました)


ただ、SLEルール制定についての協議をはじめた当初のR&A(ロイヤル&エインシェントGC)とUSGA(全米ゴルフ協会)間のルールに対する意志統一の乱れや、ルールの段階的実施、また適合・不適合の2つのリストの存在など諸々の事情から、SLEルールは我々一般ゴルファーにとって非常に分りにくいものになっているように思います。ネット上でもルールについて様々な意見や解釈が散見され一般ゴルファーの中には、これらを鵜呑みにすることでルールを誤って理解されていたり、混乱されている方も少なくないのではないでしょうか。


このような状況を考慮し、このサイトでは個人の思惑や推測を極力排除し、JGA(日本ゴルフ協会)の正式見解を元に2008/1/1施行のSLEルールを出来る限り詳細かつ明確な解説をすることを試みました。そのためにSLEルール関連のJGA発行書類を出来る限り入手し、複数の書類を付き合わせながら事実を確認していきました。それでもいくつか疑問点が残り、R&AやJGAに問い合わせを行い疑問点をクリアにしました。このような手順を踏みこれまでに纏め上げた内容をこれから数回にわたり順次ご紹介いたします。



※なお、文中にR&A(ロイヤル&エインシェントGC)USGA(全米ゴルフ協会)JGA(日本ゴルフ協会)、などのゴルフ団体の名称が出ていますがこれらの関係性についても後ほど別途書いてみたいと思います。少し簡単に説明すると、世界にはゴルフルールを統括する団体が2つ存在します。イギリスに本部があるR&A(ロイヤル&エインシェントGC)と、アメリカに本部があるUSGA(全米ゴルフ協会)、がそれらです。その他世界各国ゴルフが盛んな国ごとに団体がありますが、それらはR&A、USGAのいずれかの傘下団体として活動しています。ちなみにJGA(日本ゴルフ協会)R&A傘下であり、基本的にJGA見解はイコールR&A見解と捉えて問題ありません。


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